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tamakiのIT日記

アウトドア般若心経の旅 〜沖縄ゆいレール編(後編)〜

はじめに

アウトドア般若心経とは

アウトドア般若心経とは、イラストレーターのみうらじゅん氏(以下「師」と称する)が提唱した「般若心経」の新しい写経方法です。

みうらじゅんは「般若心経」278 文字を、家を出て(これを「出家」と称す)、経文の文字のある市街の看板等の文字を写真に撮り(これを「写経」と称す)、経文の完成を目指すことを「アウトドア般若心経」と定義した。

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)

アウトドア般若心経が楽しめる Web アプリ

パソコン、スマホで使える Web アプリを開発しました。

無料でご利用いただけます。

今回のブログは、以下 Web アプリを手に街を行脚した旅の記録になります。

www.outdoor-heart-sutra.com

写経の旅

今回の記事は後編になります。

前編はこちら

美栄橋駅

「軽食の店 ルビー 」が定休日により途方に暮れてしまった前編

さすがの暑さにバテてしまい、近くの公園の木陰に逃げ込みました。そこで一息つき、冷静になって考えてみると、今自分が食べたいのは A や B や C のアルファベットの頭文字を冠したデカ盛りランチではなく、さっぱりあっさりした普通の沖縄そばであることに気づきました。

www.orionbeer.co.jp

次は「普通の沖縄そば」を探す旅に出ることにしました。

しかし沖縄そばといえど、県内には800店舗以上の沖縄そば屋があると言われおり、どこに行こうか悩みました。

照見五蘊皆空

五蘊」とは、「色(体)・受(感覚)・想(イメージ)・行(深層意識)・識(判断)」を意味します。仏教では、自分という主体を構成する基本要素というような意味合いで使います。これら五蘊が自分を自分たらしめていることを理解し、これら五蘊を見極めなさいと説きます。そして「皆空」。次にそれらは空であると見極めなさいとの教えです。観自在菩薩は、たんに自己の主体性を否定するのではなく、自己に対する正しい見方を持つようにと教えてくれます。

ここでも般若心経の教えが役に立ちました。

目を閉じ自分自身に問いかけました。今求めている沖縄そばとは?

パッと、漢字3 文字が浮かび上がりました。

「道頓堀」

次の目的地が決まった瞬間です。

牧志駅

「一」

「道頓堀」の真相は後にし、まずは次の駅「牧志駅」に向かいます。

奇跡の 1 マイルと言われた国際通りと言えばこの駅です。今や観光客が一番訪れる駅とも言えるかもしれません。

そんな牧志駅から向かうのは、これまた沖縄観光の定番スポット「那覇市第一牧志公設市場」です。

「道」

那覇市第一牧志公設市場」の 2 階には飲食店が連なっており、そこに「道頓堀」というお店があります。

このお店には、「道」の字(2 回目)を写経しに来ただけではなく、来ようと思った理由があります。

実はこのお店、筆者が高校生の頃に初めてアルバイトをしたお店なのです。

那覇市第一牧志公設市場は、2023 年 3 月に建て替わったばかりでとても綺麗になっており、特に吹き抜けの影響でだいぶ変わっていましたが、当時を思い出させる雰囲気はまだ残っていました。

10 代の多感な時期に、まかないとして頻繁に食していたここの沖縄そば

食べたかった「普通の沖縄そば」がここには変わらず残っていました。

Image from Gyazo

今や様々な沖縄そばがあり、麺は手打ちで、スープの出汁は ◯◯ からなどなど、こだわりのそば屋が乱列していますが、なんだかんだ食べたいのは、こんなシンプルな普通の沖縄そばなんですよね。

道頓堀に限らず、観光スポットである公設市場のお店はどこも金額設定は高めですが「那覇市第一牧志公設市場」で普通の沖縄そばを食べたいならオススメしたい良店です。

www.dotonbori-naha.jp

「舍」

お腹も満たしたことでだいぶ回復した体力。次の目的地に向かいます。

次は旭橋駅です。

旭橋駅へ向かう道中、桜坂や平和通りで目に付いた文字を写経しました。

素敵な映画館です。

わかりずらいですが、左側のシーサーに「舍」があります。かわいい。

「不」

すごいネーミング ...。

旭橋駅

旭橋駅に着きました。

波といえば「波之上」でしょう。ということで、これまた結構な距離ですが、波之上に向かうことにしました。

波上宮(神社)も久しぶりです。

「波」

本家のマイルールを踏襲し、なるべく神社仏閣にあるものからは写経しないことにしていますので、境内から出て探してみました。

いたるところに「波」が溢れています。

「自」

ついでに波上宮の真横にある我が母校、波之上自動車学校からも写経させてもらいました。

赤嶺駅

さあ、いよいよ次が最後の目的地となります。

最終地点は、瀬長島にある瀬長島ホテルを目指そうと思います。

バスで移動ができないか確認したところ、ちょうど瀬長島行きのバスが出る時間でした。赤嶺駅からバスで向かいたいと思います。

www.umikajiterrace.com

瀬長島

瀬長島那覇空港から車で 15 分ほどにある陸路で繋がっている島になります。

沖縄のサントリーニ島?と誰が言ったか言わないか、海と夕日とそして飛行機が間近に楽しめる観光スポットです。

島内には猫さんたちも多く見かけます。海風が気持ちよく、ゆったりとした時間が流れる素敵な島です。

「神」

バスを降りるとすぐ目の前に瀬長島ホテルがあります。

そこで最後の文字「神」を写経です!

これで今日予定していたすべての写経ポイントを周り終えることができました。

いや〜大変だった。しかし無事にやり終えることができとても爽快な気持ちです。足は棒のようですがそれすら心地よいです。

琉球温泉 龍宮の湯

最後は、瀬長島ホテル内にある温泉施設に伺い、身も心も整えて一日を終わりにしたいと思います。

www.resorts.co.jp

こちらの温泉施設は宿泊客はもちろんのこと、日帰り利用も可能になっておりオススメです。特に夕方の時間帯に訪問してもらいたいスポットです。理由は西海岸に沈む夕日。本当に綺麗です。また飛行機の発着を目の前で楽しめるので飛行機好きにはたまりません。

イマジン

サウナ内に設置されているテレビには、国と国との争い事がニュース映像として映され、その映像の BGM にはジョン・レノンの「イマジン」が流れていました。


師は「イマジン」について、般若心経から影響を受けていると説きます。

ジョン・レノンは、

天国なんてない。地獄もない。国境もない。所有しているものもない。

と歌っています。

是諸法空相 不生不滅 不垢不浄 不増不減

これもない。あれもない。ないない尽くし。このすべてを否定していくパワーが、般若心経のひとつの特徴で「イマジン」と類似しています。

まるで、ジョン・レノンの「イマジン」ではないか!すべてのことを打ち消して夢想する歌詞が般若心経に似ていることに気づきました。

出典:みうらじゅん 著 /『アウトドア般若心経』 /幻冬舎 /2007 年

湾岸戦争、9.11 同時多発テロ時など、この曲は放送禁止の措置が取られた過去が幾度としてありました。天国や宗教の存在の否定や、共有を強調する歌詞が共産主義的だというのが理由のようですが、国と国との争いに平和の象徴とも言えるこの曲が不都合であったことは誰が見ても明らかです。

ふと気を抜くと、これらのニュースは日常のように目の前を通り過ぎていきます。慣れ、無感覚、非日常が日常に溶け込み、受け入れてしまう恐ろしさ。

イマジン、そして般若心経から、否定することの大切さを学べます。

あとがき

終わってみると、想像以上の距離を歩いていました。

歩数 39,000 歩超、総歩行距離 30km 超の写経の旅となりました。

なぜこんな猛暑の中、誰に言われるでもなく、多くの人から見れば意味不明な苦行ともいえる行為を行ったのか? もちろん、自身で開発した Web アプリのドッグフーディングも兼ねていました。しかし、それだけではありません。ここ数ヶ月、やらなければいけないことに圧倒され、心身ともに疲れていました。焦りや不安、プレッシャーから逃れたいとの思いから、1 日だけでもアウトドア般若心経だけのことを考え夢中になれば、他のことを考えずに済むのではないかという不純な動機もありました。

悩みの中にいると、一生ここから抜け出せないような気になって、さらに悩みを深めます。どこかで断ち切りたいと思うのですが、それがどこなのかが分かりません。

出典:みうらじゅん 著 /『アウトドア般若心経』 /幻冬舎 /2007 年

炎天下の中、朦朧としながら歩いていると、

「こんなことして何の意味があるのか?僕は一体何をやっているんだろうか?」何度、自問自答したことでしょう。

しかし、不思議と歩き続けアウトドア般若心経に夢中になっていると、過去と未来に縛られることの無意味さ、自己への執着が「苦」を生み出していること、悩みの小さに気づきます。仏教でいうところの「無我」、つまり自分探しではなく、自分なくしの方が大事だよと般若心経は説きます。「無我夢中」になって写経に取り組むことで、般若心経の真髄にほんの少しだけ触れられた気がしました。

いくら考えても答えが出ないのは、そんなものは初めっからないからなんだよ。 ただ歩こうよ!意味を求めずに今を生きよう。

出典:みうらじゅん 著 /『アウトドア般若心経』 /幻冬舎 /2007 年

アウトドア般若心経(Web アプリ)は、企画から開発まで 8 ヶ月の歳月を要しました。長い長い開発の旅を終え、この度無事にリリースできたことを嬉しく思います。

今後もインターネットの世界でこのアプリが旅を続けられるように、これからも改善を続け、できるだけ長く運用を続けていければと思っています。ひとりでも多くのみなさんに楽しんでもらえると幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました!

2023 年 9 月吉日

お知らせ

Webアプリ開発についての技術記事も公開しています。個人開発に興味がありましたらぜひご覧ください。

shirotamaki.hatenablog.com