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tamakiのIT日記

アウトドア般若心経の旅 〜沖縄ゆいレール編(前編)〜

はじめに

アウトドア般若心経とは

アウトドア般若心経とは、イラストレーターのみうらじゅん氏(以下「師」と称する)が提唱した「般若心経」の新しい写経方法です。

みうらじゅんは「般若心経」278 文字を、家を出て(これを「出家」と称す)、経文の文字のある市街の看板等の文字を写真に撮り(これを「写経」と称す)、経文の完成を目指すことを「アウトドア般若心経」と定義した。

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)

アウトドア般若心経が楽しめる Web アプリ

パソコン、スマホで使える Web アプリを開発しました。

無料でご利用いただけます。

今回のブログは、以下 Web アプリを手に街を行脚した旅の記録になります。

www.outdoor-heart-sutra.com

出発準備

持ち物

最低限スマホだけで十分ですが、今回は師の経典も持参することにしました。

マイウェア

先日届いたアウトドア般若心経T シャツと、強い日差しに備えサングラスを着用しました。

suzuri.jp

マイルール

徒歩以外の移動手段は、公共交通機関(モノレール、バス)のみ利用可とします。

沖縄の交通情報

モノレールは 1 日フリー乗車券があり「おとな / 800 円」で利用できます。注意したいのはバスです。沖縄のバスは、PASMOSUICA などの交通系 IC カードは使えません。IC カードを利用したい方は、沖縄専用の OKICA(オキカ)を購入しましょう。

出典:ゆいレール | 乗車券・運賃 / OKICA(ICカード

マイルート

ゆいレールの駅を起点に徒歩圏内で行ける場所を目的地としてマイルートを計画しました。

出典:ゆいレール | 路線図

写経の旅

9 月某日。天気は晴れ。8 月のピーク時と比べればだいぶ気温は下がってきたとはいえ、本日も最高気温 34 度と真夏日の予報。

果たして、今回の旅を通して何か気づきを得ることができるのか?そして無事に帰って来ることができるのか?

アウトドア般若心経の旅 〜沖縄ゆいレール編(前編)〜 始めます!

後編はこちら

スタート地点

ゆいレールの始発駅である那覇空港駅からスタートです。

那覇空港駅

「空」

まずは「空」を写経です!

そもそも始まりは街の駐車場の入り口に、「空アリ」の文字を見つけたのがきっかけでした。

出典:みうらじゅん 著 /『アウトドア般若心経』 /幻冬舎 /2007 年

師はアウトドア般若心経の始まりを、「空アリ」の駐車場の看板を見つけたのがきっかけであったと仰せでした。違いはあれど、般若心経の真髄である「空」の教えを学ぶ始まりとしては申し分ないでしょう。

もちろん、那覇「空」港ですので、見渡す限り「空」ばかりです。「空」は何もない状態を表していますが、「空」がこれだけいたるところに存在すると、なんだか「空」があるように思えてきます。

色即是空 空即是色

あるものがない。ないものがある。

長い長い旅の始まりです...

首里駅

今回の旅の目的はアウトドア般若心経を通して街の魅力にも触れることです。

筆者の出身地は那覇市ではありますが、人生の半分は県外で過ごしていたため、特に最近の市街はそんなに詳しくないのが正直なところ。首里駅に降りてはみたもののどうしたものか...。 降りる駅以外は何も決まっておらず、行き当たりばったりのノープラン旅です。

とにかく、まずは首里城を目指して歩いてみることにしました。

「識」

首里城に向かって歩いていると、幸先よく早速文字を見つけました!

識名酒造の看板から「識」を写経です。

識名酒造は、最古の古酒があることで有名な酒造です。

昔の沖縄には 100 年、200 年といった古酒が存在しましたが、第二次世界大戦の戦禍によりそのほとんどが失われてしまいました。現在沖縄で公表されている最も古いといわれている泡盛は、識名酒造の約 150 年ものの古酒といわれています。

www.shikinashuzo.com

「時」

沖縄の皆さんには馴染みのあるレトロな看板。

識名酒造さんの看板メニュー「時雨(しぐれ)」のラベルにも使われていますが、そこから「時」の文字を写経しました。

「時雨」という泡盛の名前の由来は、秋の末から冬の初めにかけて、ぱらぱら通り雨のように降る雨のように、さわやかな飲み口の泡盛をとの思いを込めて「時雨(しぐれ)」と名付けられたそうです。

出典:識名酒造

「道」

首里の「道」と言えばこれでしょう。

金城町石畳道(きんじょうちょういしだたみみち)です。琉球石灰岩が敷かれた石畳道で首里城まで道が続いています。数年前に来た時はもう少し看板の文字がハッキリと確認できたのですが、だいぶ薄くなっていました。

まさに「諸行無常」、文字が薄れていく様子からも般若心経の教えを学ぶことができます。

「真」

午前中の早い時間とはいえこの日も猛暑でとにかく暑い...。

金城町石畳道を登った途中にある茶屋で休憩でもと思い立ち寄ることにしました。

しかし残念ながら開店前でオープンしていません。

度一切苦厄

ここでいう「苦」は「苦しい」ではなく、「思いのままにならないこと」を表しています。「四苦八苦」も仏教用語ですが、「四苦」は、生・老・病・死の四つの苦しみ。「八苦」は、この四苦に愛別離苦(愛するものと別れる苦しみ)・怨憎会苦(憎むものと出会う苦しみ)・求不得苦(求めても得られない苦しみ)・五陰盛苦(心身の苦痛)を加えたものです。「四苦八苦」で、ありとあらゆる苦しみのことを表現しています。そして「度」は「解き放たれる」という意味ですが、思いのままにならないことをどうやって受け入れるのか? 般若心経では説かれます。

とはいえ、まだまだ煩悩にまみれている筆者には「苦」の開放は 1 ミリとも訪れず、逆にあまりの暑さから「憤」すら感じていました。

しかしそんな暑さと憤りが沸点に到達したとき、茶屋の看板に「真」の文字を発見したのです!

ここでもまたひとつ般若心経の教えから学ぶことができました。

首里城

その後、目的地の首里城へ。

2019 年の火災以来の訪問です。首里城が過去の大戦で焼失したことは広く知られていますが、実は過去に 5 度もあったことはあまり知られていません(1453 年、1660 年、1709 年、1945 年、2019 年)。2019年の火災では、正殿をはじめとする 9 施設が焼失してしまいましたが、その後の復興の様子を見ることができとても感慨深かったです。

仏教の根本思想でもある「 諸行無常」、人も、物ごとも、永遠のものは存在しないということを改めて痛感しました。

「空」

首里城を後にし次の目的地へと向かう途中、ローソンがあったのでさんぴん茶でも買おうと思って立ち寄りました。

外観が首里城仕様になっていて面白いと思いパシャリ...

... ?(違和感)

外観とマッチしすぎていて気づきませんでしたが、よく見ると「空」の文字が!!

自治体の景観条例によるものかと思いますが、街に馴染み素敵です。

これらタイプの看板は、京都や鎌倉など観光地でよく見かけますが、ここにも「空」の思想が見え隠れします。

是故空中 無色

「青、緑、赤...。 色はいらない。こだわりを捨てなさい」と。

シンプルな看板が教えてくれます。

栄町駅

探しものは何ですか?

次の目的地の「栄町市場」に向かいます。

カオスな街の様子から何かあるのでは?と感じさせる「栄町市場」です。

時間帯的にお昼前だったのもあり、どこかでお昼ごはんでもと思い写経ついでにお店も探してみることにしました。

しかしこれまた早すぎた時間が仇となり、精肉店など市場のお店はやっていましたが、飲食店はほとんど開いていません。また看板も多数ありますが、なかなか般若心経の文字を見つけることができませんでした。

半ば諦め場所を移動しようと思ったとき、井上陽水風の男性から声をかけられました。

筆者が観光客に見えたのか?道に迷っていると思われたらしく「どこに行きたいんですかぁ?」と声をかけられました。

アウトドア般若心経やっているんですよ」と伝えたところで不審者がられるだけなので、栄町駅までの道を聞いたところ、丁寧に教えてくれました。

聞いてもいないのですがなぜか「飲み屋は早い時間帯はほとんどやっていないさ〜。夕方ごろにまた来た方がいいさ〜」とアドバイスをいただき、「そこでお店やっているから次来た時は飲みに来たらいいさ〜」と誘われました。完全に市場に迷い込んだ観光客だと思われているようでした。

ちょっと強面で掛けているグラサンやファンキーな風貌もあってか、最初は身構えてしまいましたが、話してみるととてもいい人で、自由な空気を身にまとったその男性からは微かにココナッツの甘い香りがしました。その瞬間、ふと頭にこの曲が流れました。


師はこの曲をとても仏教的だと言います。

“探し物はなんですか?見つけにくいものですか?”から始まって、“それより僕と踊りませんか?”ってね。そこから見方を変えたんです。必死で探すから見つからないんだって悟ったんですよ。そして無心になって街を歩き回り、最終的に全文字揃えたってわけです。 つまり真理は、『それより僕と踊りませんか?』でね。探したところにはないんですよ、欲しいものは。目的を決めないで行ったときに、たまたま見つかる。狙って行く方が、すごく無駄だってことでしたね。

出典:IMA プロジェクト『みうらじゅんインタヴュー「“ない”写真の作り方」

男性に礼を言い、次は夕方に再訪し飲み踊り明かそうと誓い、栄町市場を後にしました。

美栄橋駅

軽食の店 ルビー

次に降り立った駅は「美栄橋」

栄町市場でお昼を逃したため、急遽予定変更です。食を求めやってきました。

当 Web アプリはバックエンドでRubyプログラミング言語)を使っています。そんな Ruby に敬意を表し、Rubyist 御用達?のお店に向かうことにしました。

駅から徒歩で向かうには結構な距離です(往復 30 分ぐらいかかります)。普段は車で行くような距離感のお店ですが、覚悟を決め歩みを始めました。炎天下の中ひたすらルート 58 を北上すると左手におなじみのあの看板が見えてきます。

オレンジの看板が眩しい!

軽食の店 ルビー 泊店 - 美栄橋/食堂 | 食べログ

看板に軽食とは書いていますが、全然軽食じゃないです。むしろ重い。そんなボリューミーかつ豊富なメニュー数を誇る地元民からも愛される名店です。

ランチは A にしようか?B にしようか?それともCか?と悩みつつ、店内に向かうと...

「?」

何かがおかしい。もう 12 時前だというのに人の気配がまったくしない。

それもそのはず、今日(水曜日)はまさかの定休日。完全に火曜日が定休日だと思い込んでいました。

Ruby Tuesday ...。大好きな The Rolling Stones が一瞬嫌いになりそうでした。

あ、そんなストーンズですが、10 月 20 日に 18 年振りのスタジオ・アルバムを発売しますね(楽しみ)

rollingstonejapan.com

ストーンズ のように止まらず転がり続けたいところですが、さすがにここまで来ての定休日は凹みます...。まさに徒労。

「タクシーに乗りたい。もうやめたい...」

「一体、僕は何のためにこんなことをしているんだろうか...」

あまりの暑さから朦朧とし、邪念が頭をよぎります。

果たして、この後もアウトドア般若心経の旅を続けることができるのか?

後編に続く...